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1月, 2025の投稿を表示しています

📗知覧の風(短編小説)

鹿児島の知覧。そこは、悠真にとって、少年時代の思い出が詰まった懐かしい町。 高校までは歩いてたったの5分。周りの友達が毎朝1時間かけてバスや電車に揺られているのを横目に、「お前はいいよな~」なんて言葉をよくかけられる。確かに、便利な場所に家があるのは幸運かもしれない。 でも、悠真にとって知覧はただの便利な“場所”なんかじゃない。 幼い頃は、家の近くの麓川でカニを捕まえたり、鰻を取ったり。豊かな自然が遊び場だった。夏には、川辺で蛍が幻想的な光を放ち、夜空には満天の星空が広がる。まるで、自分が時代劇の中に迷い込んだような気分になることもあった。 江戸時代から続く石畳の道、緑に囲まれた武家屋敷。そんな景色を眺めるたびに、悠真は過ぎ去った時間に思いを馳せる。 高校に進学しても、悠真の毎日は穏やかに過ぎていった。昼休みには家に駆け戻り、母の手料理を食べるのが日課だ。 「ただいま!」 「おかえりなさい。ほら、温かいうちに食べなさい。」 ふわっと漂う味噌汁の香りは、母の味、そして故郷の味。それは、悠真にとって、少年時代を思い出す、懐かしい記憶の扉を開く鍵だった。 そんな変わらない日々の流れの中で、悠真には忘れられない思い出がある。 それは、小学生の頃の遠足。行き先は、薩摩富士とも呼ばれる開聞岳。悠真にとって初めての本格的な登山だった。 片道四里(約16キロ)。長い道のりも、友達と一緒なら楽しい冒険に変わる。 「おい、悠真! 何か面白い形の雲があるぞ!」 「本当だ! あれ、亀みたいだな!」 笑い声が山道に響く。 途中、何度か疲れて座り込みそうになった。 「もうダメだ…。」 そんな時、いつも友達が励ましてくれた。 「もう少し頑張ろうぜ! 頂上からの景色、すごいらしいぞ!」 その言葉に背中を押され、悠真は一歩一歩、足を前に進めた。 そして、ついに頂上へ! 目の前に広がる景色は、まさに絶景だった。青く輝く薩摩の海、どこまでも続く空。その雄大さに、悠真は息を呑んだ。 「…すごい。」 達成感と、共に登り切った仲間への感謝の気持ち。その二つが、悠真の胸に深く刻まれた。 あれから数年。高校生になった悠真は、桜の花が咲き乱れる護国神社に立ち寄る。 ひらひらと舞う花びら。 それは、まるで母の優しい眼差しのよう。 悠真は、あの開聞岳の頂上で見た景色を思い出す。そして、あの時感じた仲間の大切さを。 「い...

デイランドユニークケアのこだわり2(すばらしい回想法)

  デイランドユニークケアの回想法:認知症予防・改善への新たなアプローチ 高齢化社会が加速する現代において、認知症は大きな社会問題となっています。55歳以上の人口に占める認知症要介護認定者の比率は、2005年は6.7%でしたが、2015年には7.6%、2030年には10.2%になると推計されています。 デイランドユニークケアでは、このような状況を踏まえ、認知症の予防・改善に効果的な 回想法 を積極的に取り入れています。 回想法とは、過去の記憶を語り合うことで脳を活性化し、認知機能の維持・向上、精神的な安定、コミュニケーション能力の向上などを促す心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏によって提唱され、近年、認知症の非薬物療法として注目されています。   回想がもたらす効果 回想法は、認知症の方々にとって多くの素晴らしい効果をもたらします。 記憶力向上 : 過去の記憶を呼び起こす作業は、脳全体の活性化に繋がり、記憶力の維持・向上に役立ちます。 意欲向上 : 過去の楽しかった思い出や、やりがいを感じていた頃の記憶を思い出すことで、自己肯定感や自尊心を取り戻し、意欲の向上に繋がります。 コミュニケーション促進 : グループ回想法では、参加者同士がそれぞれの思い出を語り合い、共感することで、コミュニケーションが促進されます。 認知症の予防・改善 : 脳の活性化、意欲やコミュニケーション能力の向上は、認知症の予防・改善、そして症状の進行を遅らせるのに効果的です。   不安や孤独感の軽減 : 過去の経験を語り、共有することで、不安や孤独感を軽減することができます。 科学的根拠に基づいた回想法 回想法は、単なる昔話に花を咲かせるような娯楽ではありません。その効果は多くの研究によって裏付けられています。例えば、国立長寿医療研究センターの研究では、回想法を行うことで、脳の血流が増加し、認知機能が改善されるという結果が出ています。 また、回想法は、気分の落ち込みや意欲の低下といった精神的な症状にも効果があることが示されています。   デイランドユニークケアにおける回想法の実践 デイランドユニークケアでは、利用者様一人ひとりの人生を尊重し、その人らしさを引き出すことを目的とした、 パーソンセンタード・ケア ...

ふれあいの森の蝋梅、春の兆しを告げる鮮やかな黄色

新年を迎えたばかりのふれあいの森で、早くも春の訪れを感じさせる光景に出会いました。青い空の下、鮮やかな黄色い花を咲かせているのは蝋梅(ロウバイ)です。 蝋梅は、その名の通り、蝋細工のような質感の花びらを持つ梅に似た花を咲かせる落葉樹です。例年、12月下旬から2月にかけて開花し、寒さの中でいち早く春の訪れを告げる花として親しまれています。 ふれあいの森で咲く蝋梅は、澄んだ冬の空気の中で、ひときわ鮮やかな黄色を放ち、訪れる人の心を和ませてくれます。まだ寒さが残る中で、力強く咲く蝋梅の姿は、新しい年の希望を感じさせてくれるかのようです。 蝋梅の花言葉は「慈愛」「慈しみ」「先導」「先見」などです。厳しい寒さの中でいち早く咲くことから、「先導」「先見」という花言葉が生まれたと言われています。また、うつむき加減に咲く花の姿が奥ゆかしいことから「慈しみ」という花言葉が生まれたとも言われています。 ふれあいの森を訪れた際は、ぜひ蝋梅の周りを散策してみてください。甘く優しい香りに包まれ、一足早い春の息吹を感じることができるでしょう。 蝋梅の見頃は、これから2月にかけて続きます。ふれあいの森で、春の訪れを探してみてはいかがでしょうか。 インターネット美術館の写真もご覧ください