デイランドユニークケアの回想法:認知症予防・改善への新たなアプローチ
高齢化社会が加速する現代において、認知症は大きな社会問題となっています。55歳以上の人口に占める認知症要介護認定者の比率は、2005年は6.7%でしたが、2015年には7.6%、2030年には10.2%になると推計されています。
回想法とは、過去の記憶を語り合うことで脳を活性化し、認知機能の維持・向上、精神的な安定、コミュニケーション能力の向上などを促す心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏によって提唱され、近年、認知症の非薬物療法として注目されています。
回想がもたらす効果
回想法は、認知症の方々にとって多くの素晴らしい効果をもたらします。
- 記憶力向上: 過去の記憶を呼び起こす作業は、脳全体の活性化に繋がり、記憶力の維持・向上に役立ちます。
- 意欲向上: 過去の楽しかった思い出や、やりがいを感じていた頃の記憶を思い出すことで、自己肯定感や自尊心を取り戻し、意欲の向上に繋がります。
- コミュニケーション促進: グループ回想法では、参加者同士がそれぞれの思い出を語り合い、共感することで、コミュニケーションが促進されます。
- 認知症の予防・改善: 脳の活性化、意欲やコミュニケーション能力の向上は、認知症の予防・改善、そして症状の進行を遅らせるのに効果的です。
- 不安や孤独感の軽減: 過去の経験を語り、共有することで、不安や孤独感を軽減することができます。
科学的根拠に基づいた回想法
回想法は、単なる昔話に花を咲かせるような娯楽ではありません。その効果は多くの研究によって裏付けられています。例えば、国立長寿医療研究センターの研究では、回想法を行うことで、脳の血流が増加し、認知機能が改善されるという結果が出ています。
デイランドユニークケアにおける回想法の実践
デイランドユニークケアでは、利用者様一人ひとりの人生を尊重し、その人らしさを引き出すことを目的とした、パーソンセンタード・ケアの理念に基づいた回想法を実践しています。従来の回想法に加え、独自の工夫を取り入れ、以下の4つの手法を柱としています。
※パーソンセンタード・ケアとは、各個人のニーズや価値観、生活の優先順位を尊重し、その人個人に焦点を当てたケアを提供するアプローチです。このケアのアプローチでは、利用者一人ひとりの独自性や自己決定を重視し、個々の選択や自由を尊重することが基本原則とされています。特に、高齢者ケアや障害者サポート、精神健康の分野で重要視されているこの方法は、利用者がより自分らしく、質の高い生活を送ることを支援することを目的としています。
- 物語化: 個人の思い出を物語のように再構成します。これは、過去の出来事を時系列に整理し、筋道を立てて語ることで、記憶の想起を促し、脳全体の活性化に貢献します。また、自分の人生を物語として客観的に捉え直すことで、新たな気づきや発見を得ることも期待できます。「茨城疎開物語」
- 和歌化: 思い出を五七五七七の三十一文字に込めて表現します。短い言葉で表現する作業は、脳への負荷を高め、認知機能のトレーニングに繋がります。また、言葉を選ぶ過程で、記憶や感情が整理され、自己理解を深めることにも役立ちます。
- 人生ゲーム化: 人生ゲームを題材に、参加者の人生を振り返りながら、様々な出来事を体験します。
これは、参加者同士のコミュニケーションを促進するだけでなく、人生における様々な選択や岐路を再認識することで、自己肯定感や人生への満足度を高める効果も期待できます。さらに、ゲームを通して楽しみながら過去の出来事を振り返ることで、心理的な抵抗感を減らし、自然な形で記憶を呼び起こすことができます。 - 歌化: 思い出の歌を歌ったり、歌詞を創作したりします。
音楽は、記憶や感情に強く結びついているため、歌を通して過去の記憶を鮮明に蘇らせることができます。また、歌を口ずさむことは、発声練習にもなり、口腔機能の維持にも役立ちます。
これらの手法は、単に過去の記憶を思い出すだけでなく、五感を刺激し、創造性を活かし、他者との共感を深めるといった要素を取り入れることで、回想法の効果を最大限に引き出すことを目的としています。
各手法が回想の効果を高めるメカニズム
回想法と健康寿命
回想法は、認知症の予防・改善に貢献するだけでなく、高齢者の方々の健康寿命の延伸にも繋がります。
まとめ
回想法は、認知症の予防・改善に効果的なだけでなく、高齢者の方々がより豊かに、そして自分らしく生きるためのサポートとなります。デイランドユニークケアでは、今後も様々な工夫を凝らし、利用者様にとってより良い回想法を提供してまいります。
コメント
コメントを投稿