冬至だった今日、ご利用者様と「冬至」から始まるしりとりをしました。
冬至→自動車→矢車草→馬→待ち合わせ→セーター→ターミナル→ルミネ→猫→恋人
やっぱり今回も、この言葉をつかってAIに物語を作ってもらいました。
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冬至の夕暮れは、昼と夜の境目がいつもより曖昧に見えた。街の輪郭は早くから藍色に沈み、吐く息だけが白く主張する。私は自動車のエンジンを切り、フロントガラス越しに人の流れを眺めた。駅前のターミナルは、帰宅の足音とアナウンスが折り重なって、ひとつの大きな生き物みたいに脈打っている。
待ち合わせは、ルミネの正面入口。けれど、約束の時間を少し過ぎても、彼女の姿は見えなかった。
私は首元までセーターを引き上げ、指先を擦る。ふと足元で、かすかな鳴き声がした。視線を落とすと、看板の影に猫が一匹、丸くなっている。毛並みは黒と白のまだらで、片耳が少し欠けていた。人の波に押されない場所を選んだように、静かで、しかしこちらをよく見ている。
「寒いのに、ここで待ってるのか」
声をかけると、猫は「そうだ」とでも言いたげに瞬きをした。私は車から小さなブランケットを持ってきて、そっと猫の近くに置いた。猫は警戒しながらも、数秒後にはその上に乗って、安心したように身体を丸めた。
その瞬間、背後から風がすっと抜け、微かな甘い香りがした。
「ごめん、遅くなった」
振り返ると、恋人が立っていた。頬を赤くして、肩には薄い雪が乗っている。手には紙袋がひとつ。彼女のセーターは淡い青で、胸元に小さな刺繍が見えた。
「冬至だから、渡したくて」
彼女は紙袋から一本の小さな花を取り出した。矢車草だった。冬の街で見るには不思議なくらい鮮やかな青。花びらが小さな車輪みたいに整っていて、暗い空気に灯りをともしたようだった。
「矢車草って、夏の花じゃないの?」
「そう。でも、温室で育てたの。どうしても、今日に似合う色が欲しくて」
彼女の言葉は、いつも少しだけ遠回りで、だからこそ胸に届く。冬至——夜がいちばん長い日。けれど、明日から少しずつ、光が戻る。その“戻りはじめ”を、青で祝いたいのだと言う。
私は花を受け取り、視線を落とす。猫がブランケットの上で、私たちを見上げている。まるで立会人だ。
「ねえ、今日さ」
恋人は遠慮がちに続けた。
「駅の外れに、馬の像があるの知ってる? 昔ここ、宿場の名残があったらしくて。そこに行きたいの」
ターミナルの喧騒を背に、私たちはゆっくり歩き出した。ルミネの明かりがガラスに反射し、街は一層きらめく。冬至の夜は長いのに、光が多いから不思議と心細くない。
駅前の広場の端に、確かに馬の像があった。背筋を伸ばし、前脚を少し上げた姿。金属の肌は冷たそうだが、表情は凛として、どこか優しい。恋人は像の前で立ち止まり、矢車草を見つめた。
「昔の人は、暗い夜の先に必ず朝が来るって信じて、馬に願いを乗せて走らせたんだって」
「願いを?」
「うん。離れても、迷っても、また会えるようにって」
そう言って、彼女は私の手を取った。指先が冷えている。私は自分の手で包み、温める。夜が深くなるほど、触れ合う体温は確かなものになる。
背後で、ふいに小さな影が動いた。さっきの猫が、いつの間にかついてきていたのだ。広場の石畳を器用に歩き、馬の像の台座にちょん、と前足をかける。まるで「ここまで案内した」と言わんばかりに、誇らしげに尻尾を揺らした。
恋人が笑う。
「この子、私たちのこと、見守ってくれてるみたい」
「そうだな。冬至の使いかもしれない」
彼女は少し考えてから、真面目な声で言った。
「ねえ。長い夜って、怖いだけじゃないんだね。こうやって一緒にいたら、夜のほうが、言葉がちゃんと届く気がする」
私は矢車草をそっと持ち上げる。青い花びらは、暗闇の中でも沈まない。むしろ夜に守られて、いっそう透明に見える。
「明日から、少しずつ明るくなる」
「うん」
「でも、明るくなるからじゃなくて——今、ここにいるから、いいんだと思う」
恋人の目が、驚いたように細くなって、それから柔らかくほどけた。彼女は私のセーターの袖をつかみ、ほんの少しだけ近づく。吐息が白く重なった。
猫が、短く鳴いた。承認の合図みたいに。
帰り道、私は自動車をゆっくり走らせた。ターミナルの灯りが遠ざかり、ルミネのガラスの反射も小さくなる。助手席で、恋人は矢車草の青を何度も確かめるように見つめ、時々、窓の外の闇に目を向けた。
冬至の夜は長い。けれど、その長さは、失われるためじゃなく、確かめるためにあるのかもしれない。待ち合わせの一瞬の不安も、手を握る温度も、猫の足音も、馬の像の静けさも——すべてが、明日へ向かう光の準備になっていく。
車内の暖房に、彼女の肩が少しずつ緩む。私はハンドルを握りながら、胸の中でそっと誓った。
この先どんな夜が来ても、待ち合わせの場所には必ず行く。
冬至みたいに長い夜でも、矢車草みたいに澄んだ色を失わないように。
そして、猫が見ていなくても——馬が願いを運ばなくても——恋人の手を、離さないように。






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